廣池千英校長
「卒業生に贈る」



 今や諸君等は蛍雪の功を積んで学窓を出んとしている。誠におめでたい。
諸君等の胸は希望と栄光とに輝き燃えているだろう。
諸君等のあるものは進学に、あるものは実業界に、おのおのその適正に従って人生の歩みをすすめようとしている。

 しかし、現実の社会は諸君等が考えているほど甘いものではなくすこぶる冷厳なものだ。前からも後からも口では上手を言ってくれるが、心では冷ややかにあつかう。
そこに諸君等の実力と強固な意志とが試される。
弱いものは冷たい風波に流されただ強いもののみが彼岸に達することができる。
強くなり給え。国家は、そして諸君等の父兄は諸君等が真に強者となることを願っている。
常に低い優しい謙虚な気持ちをもって自分の品性と実力の向上に努力しなければならない。

さらにすすんで他人のいやがる仕事を自ら引き受けてやり給え。
あるものは馬鹿なやつだと嘲笑するかもしれない。
しかし、どんな社会でも必ずいつかは自分を認め自分をよくしてくれる。
自分の理想に向かって十分苦労して大成してくれ給え。
十カ年苦労すれば必ず報われる。

昭和四十五年の危機も迫りつつある。
特に本年は内外の情勢が一層紛糾錯雑して苦労と活動の仕甲斐のある秋だ。
僕は諸君等が欣然として苦労にあたる姿を楽しみに十年、二十年、三十年を待っている。

                       昭和41年2月10日発行 『麗鳳44号』