国家の本質ーいちばん大切なもの
生まれて間もない赤ちゃんとお母さんの姿を目の当たりにすると、
いつも、純粋で神聖な何かを感じ、心が清められる心地がします。
その姿から、人間存在の尊さとともに、人間が生きていることは
いかに危ういことか、またその危うい命が純粋無私の慈愛によって
どれほど大切に守られ育てられているのか、また人間にとって何が
いちばん大切なのかなどについて、理屈を超え、実感を伴って伝わって
くるものがあります。
根源的恩恵
私たちは、自分の力で生きているというより、さまざまな恩恵によって
生かされている存在です。戴いている幾多の恩恵のうちで最も根本的で
大きなものは、人間としての命を戴いたことと、その命が大切に守り育て
られてきたことです。
科学が進歩して、私たちの存在を支えている宇宙・自然について、多くの
事実が明らかになりました。私たちの生存と生活の基盤・条件について
詳しく知れば知るほど、普段当たり前と考えている普通の状態でも、
各瞬間の情況は信じられないほど危ういものであるのに、数え切れないほどに
多くの条件がつねに幾重にも完全に満たされて実現されているもので
あることがわかります。私たち一人ひとりが今生きて生活していることは、
奇跡としか思えないほどに、文字どおり限りなく「有り難い」ことであるのです。
私たち日本人の先人たちは、古来から命を戴いたこととその命が大切に
守られ養育されていることを、最も根源的な「有り難い」恩恵であると感じて、
神社を中心に、その恩恵への感謝・報恩の精神と行為を継承し、大切に
守り、次世代へ伝え続けてきました。その精神と行為こそが、私たちの家と
国の永続の根幹を支えてきました。
国家を形成し支えるもの
命を生み出しているのは、人間の力を超えた大宇宙・大自然の働き
です。しかし、私たち一人ひとりが、この世に生まれ、人間として育ち、
今人間として生活できているのは、万物を生みだし養育する大宇宙・
大自然の働きにみずから適合して、その働きを助けようとする先人たちの
精神と行為があったからです。
家族と国家は、祖先・先人たちの、子孫の生存・発達・幸福を願う純粋の
慈愛から発したもので、すべてのものを生み出し養育する大自然の働きを
助ける、先人たちの尊い精神と犠牲の結晶として形成されたものであると
いえます。特に国家は、人類精神進化の歴史の中で、家族・家に込められた
思いと理想が発達して、自分の家族を超えた多数の人々に及ぶ慈愛と願い
によって形成されたもので、だれにとっても、人間として生きて生活する
うえで最も重要な存在です。
現在では、不幸にして家族を失うことがあっても国家の保護によって
生きることができますが、家族があっても国家がなければ生きていくことは
できません。すべての国民を受け容れ、愛護し、養育する高尚な精神と、
公のために払われる尊い犠牲によって、国家は形成され、その根幹が
支えられています。
国家の本質
国家も、人間の集団ですから、その中には不自然・不純な要素があり、
欠点があります。しかし、欠点・短所だけに目を向け、不満をもって批判
するだけでは、国家を守りその発展を図り、国民や他国の人々の安心・
幸福を増進することはできません。
個人にも、長所と短所がありますが、だれの心にもある、欲望に満ちた
利己的な面と、神聖ともいえるような高尚な面のどちらをその人の本質と
思うかによって、その人の見方・感じ方、その人との関係、何を大切に
するかなどに大きな違いを生みます。
国家は、単なる個人の集団ではなく、その中核には永続する生命があり
ます。国家の本質は、目に見える組織・制度・政策などではなく、つねに
その根幹を支えていて真に永続している、国の魂とも呼べる純粋で偉大な
慈愛の精神です。
私たちは、特に国家について、目に見える目先のことだけにとらわれて
いて、先人が建国以来大切に守り続けてきた、いちばん大切なものを
見失ってはいないでしょうか。
モラロジー研究所発行平成16年「れいろう」2月号記事より