| 明けまして、おめでとうございます。読者の皆様のま すますのご健勝とご多幸をお祈り申し上げます。 さて、モラロジーを創建した廣池千九郎は、昭和三年 十一月、『道徳科学の論文』の完成を記念して、伊勢の神 宮に参拝しました。千九郎は折に触れて神宮に参り、報 恩感謝の誠を捧げたのです。その思いを継いで、私も毎 年十一月に神宮参拝をさせていただき、日本と世界の平 和を祈願させていただいています。 昨秋の参拝時は、朝から雨が上がり、さわやかな青空 の下、山々の木々の紅葉が朝舗に浮かび上がって、その すばらしい光景に目を見はりました。外宮に参ったあと、 五十鈴川に、かかる宇治橋を渡って内宮の御正殿に向かっ たのですが、降りやんだ雨が参道に打ち水をしたようで 清々しく、心が洗われるような思いがしました。 その二日前にチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ 十四世が参拝され、神宮の仔まいに感激されたと聞きま した。平安の時代に神宮を訪れた西行法師は、「何事のお わしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」と 詠みましたが、現代の世界的な宗教家も同じような感懐 を持たれたようです。確かに、神宮には、そこかしこに 神がおられるような感じがします。 神宮では、大宮司様、小宮司様にお会いして、二十年 ごとに行われる御遷宮のための造営費を納めさせていた だきました。その折に、十年後の御遷宮の具体的な準備 が年明けから始まるとお聞きし、驚きました。 第一回の神宮式年遷宮が行われたのは、持統天皇四年 (690年)のことです。以来、千三百年にわたって続けられ、 平成五年秋には第六十一回の御遷宮が古式のままに行わ れました。次回は平成二十五年(2013年)の予定です。 考えれば、御正殿をはじめ建物すべてを新築し、さら に殿内の御装束や神宝を古例にしたがって調製し、御神 体をお遷しするのですから、その準備は並大抵なもので はなく、長い年月が必要だろうと思います。これがすで に六十回以上も繰り返されてきたのです。日本という国 がいつまでも若々しく、永遠に発展していくようにとの 願いを込めて、神のお住まいを二十年ごとに建て替え、新 しい息吹を吹き込んできた日本民族の知恵に、私は感動 します。世界に例のない歴史と伝統を持つこの国に生ま れた幸せを噛みしめます。 二十一世紀に入って四年、日本も世界も揺れ動いてい ます。しかし、私たちは、眼前の事象に一喜一憂するこ となく、長期的な視点で物事を考え、早い時期から怠り なく準備を進めていきたいと思います。伊勢の神宮に込 められた日本民族の知恵にならって。 本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(1月号)誌に掲載> されている> 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。 |