日本一の長寿県』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
  モラロジー研究所は、昨年11月から12月にかけて沖縄県で開催
された文部科学省主催の「第十五回全国生涯学習フェスティバルま
なびピア沖縄2003」に参加し、11月29日に主会場である宜野
湾市(ぎのわんし)沖縄コンベンションセンターで、「家族のきずな
ふれあいフェスティバルエッセイ優秀作品発表会」を行いました。 
これに先立ち、『家族のきずな』をテーマにエッセイ作品の募集を
しましたところ、6歳から88歳の方まで、30,502編ものご応募をい
ただきました。沖縄県内のご応募は2.582編でした。
 発表会当日は、文部科学大臣奨励賞、沖縄県知事賞、モラロジー
研究所賞など、最優秀賞1点、優秀賞6点の発表と表彰式を行いま
した。どの作品もすばらしく、胸打たれるものでした。
 例えば十七歳の女性の作品「祖父の介護を通して」――祖父が高
齢になるにつれてお風呂に入らなくなり臭く汚くなって、みな頭を抱
え込んだ。見かねた私は祖父を風呂場に連れていき、ふんどしだけ
にして声をかけながらお湯をゆっくり流した。汗の匂いはこれで消え
た。そしてシャンプーリンス。目をつぶるようにと声をかけて水を流し
た。背中だけ洗って、後は自分で洗わさせた。親はお金をくれるが、
お金よりも祖父も家族の中に入って仲良くなってもらいたかった。
あれから五年、気難しかった祖父は高齢者として敬われ、笑顔が多
く見られるようになった。消えかかった家族の絆がよみがえった気が
した。
――また、例えば十五歳の少年の作品「家族の愛を感じた時」――
中三のときにシンナーを覚えて警察に補導され、母親が迎えにきて
くれた。怒られるかなと不安だったが、母は何も言わず黙って自分
を連れ帰った。その晩、トイレに行くとき居問の前を通りかかると、
母が泣いていた。母の前に行くと、何事もなかったかのように優しく
僕を見つめた。そのとき、親が悲しい思いをこらえて見守ってくれて
いるのに、僕はシンナーをやめなくていいのかと思い、自分と闘って
ついにやめることができた。
母は初めて僕に涙を見せ、抱きしめた。
――沖縄は百歳以上の長寿者が六百人近くいる日本一の長寿県です。
その要因には、亜熱帯性の温暖な気候風土、大豆、海草、魚、野菜
を豊富に摂取する食生活などがあるのでしょうが、私は、もっと精
神的な要因があるのではないかと感じています。エッセイの県内応
募数、そしてその中身を見てもわかるように、沖縄には、お年寄り
を大事にする心、親孝行の精神が息づいているのです。
これこそ長寿のほんとうの理由だと私は思います。今年も、親孝行の
大切さをしっかりと伝えていきたいと思っています。

本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2月号)誌に掲載> されている> 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。

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