孔徳成先生』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 孔子第七十七代裔孫・孔徳成先生が、ご家族三代で、モラロジー研究所に3年ぶりに来訪されました。麗澤大学名誉文学博士でもある孔先生は、四月二日の麗澤大学の入学式に来賓としてご出席くださり、親しくご挨拶をしてくださいました。新入生にとって、入学式はこれ以上ないお祝いの場となりました。

 孔先生とのご縁は、モラロジーを創建した廣池千九郎が道徳科学専攻塾(麗澤大学の前身)の開設(昭和十年)にあたりその前年に来塾を要請したことから始まります。
そのときの来日はかないませんでしたが、開塾式には当時十六歳であられた先生から「日孜孜」と「母意母必母固母我」の二つの書をお贈りいただきました。昭和三十二年に初めて来訪がかない、以来、来日の際には必ず私どもにお越しくださり、これまで十数回にわたってご講演をいただいています。

 八十四歳になられる孔先生は、数々の政府要職を歴任され今も台湾大学の教授として学生の教育に挺身されています。
「五十年間休講なし」は、まさに教育者の鑑です。お膝がやや不自由なだけで、ご健康そのもの。お声も朗々としています。

 孔先生はおかしがたい威厳を備えられ、どのような人にも礼を尽くされます。一方で、堅苦しいということはまったくなく、相手をくつろがせよう、場を和ませようと、さりげない気配りを常にされます。人の幸せを願う温かいお心が自然な動作をとおして伝わってきて、一念一行が深い仁恕(思いやり)から出ていることを感じます。

 このたび、先生は、書を二つ、揮毫してくださいました。
その一つは、
「麗(つ)ける澤(さわ)は兌び(よろこび)なり君子以て朋友講習す
        『易経』見の卦、象(しょう)に傳うの語。
 廣池千九郎博士はこの語をもって校名とし、この句の精神を、太陽が大空にあって万物を恵み潤す意である、と解説している。
 貴校は必ずやこの御遺志を受け継ぎ、廣池千九郎博士のめざされた境地に到達されることと確信する。
甲申(こうしん)(2004年)四月孔徳成」 (原文は漢文)
 そして、もう一つは、
「菁莪造士」
「菁莪(せいが)」は『詩経』にあり、人材を育成するのを楽しむということ。「造士」も同様の意味です。日本の教育現場を取り巻く環境は、ますます厳しさを増しています。そんな中で幼稚園から大学まで約千人の新入生を迎えて麗澤の新年度がスタートしました。孔徳成先生のお心をしっかりと受けとめ、真の人材教育に力を尽くしていきたいと強く思う次第です。


本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(6月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。

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