近くて近い国
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 麗澤大学教授を十年務められ、この春退職して郷里の韓国に帰られた金正年(キムジョンニョン)先生のご縁で、過日、二泊三日の日程で、ソウルを訪ねました。金先生はもと国立ソウル大学校経営大学長、日本でいえば東大経済学部長に当たります。そのような方が定年退職前に外国の一私学に来られ、教鞭をとってくださるなどということは異例のことと聞きました。金先生は麗大の知徳一体の教育理念に深く共感され、キャンパス内に奥様と住まわれて、謙虚で温かなお人柄で日韓の架け橋になってくださいました。その金先生の教え子の朴吾銖(バクオス)先生がソウル大学校経営大学長になられ、朴先生の招待でソウル大学校を訪問したのです。
 
 ソウル大学校はソウルの南郊外、グァンアク山の麓の四百三十ヘクタール(廣池学園の約十倍)の敷地にある韓国最大の総合大学で、十六ある学部の学生が二万二千人、大学院生が八千人、計三万人が在学しています。今回つぶさに拝見した経営大学では、産学協同体制がしっかりと確立され、世界に
 通用するビジネス・リーダーづくりが意欲的に進められていました。垣間見た人口一千万を超える大都市ソウルも、全体的にエネルギッシュ。韓国の首都は、教育面でも、経済面でも、活気と活力に満ちていました。
 
 うれしかったのは、昨秋、創立三十五周年を迎えた韓国道徳科学研究協会(昭和四十八年から社団法人)の金井凵iキムジェンジュン)名誉理事長、孫炳晧(ソンビョンホ六代目理事長、朴守男(バクスナム)副理事長がホテルにお訪ねくださり、楽しい夕食のひとときを持てたことです。モラロジー研究所では、日韓合同青年セミナーを平成元年から開催し、日本の若者たちが韓道研の皆さんにお世話になっています。平成三年からは韓国青年リーダー招聘事業を続けています。これからも人的な交流を深め、お互いの道徳的国づくりのために力を合わせていきたいと思いました。
 
 さらにうれしかったのは、伝統美術である韓紙人形を作る会の方々が駆けつけてくださったことです。廣池学園のれいたくキャンパスで「韓紙人形と工芸品展」を開いたのは一昨年の秋。懐かしい再会に感激もひとしおでした。
 
  モラロジーの創建者・廣池千九郎が韓国に滞在し、各地で講演をしたのは大正十一年のことです。その国を初めて訪れ、多くの方々から温かい歓迎を受け、たくさんの思いやりをいただきました。日韓両国には、政治や教育、歴史認識などに違いがありますが、人と人との間に心の垣根はないと確信することができました。”近くて遠い国”と言われてきた韓国ですが、 
ほんとうは”近くて近い国”なのです。次回はぜひ、家族とともに普段着で行きたいと思います。

本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(8月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。

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