ブラジルを訪ねて』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂

 今年の九月五日、サンパウロ州モジ・ダス・クルーゼス市近郊の社団法人ブラジル
・モラロジー研究協会イタペチ生涯学習センターで、協会設立四十周年の記念式
典が行われました。

ブラジル連邦共和国下院議員、日系のモジ市長をはじめとする多数の来賓、アメ
リカ、アルゼンチン、日本からの関係者総勢千二百五十名が参列する式典で、八十
歳になられる森昇協会理事長は思いを込めて式辞を述べられました。
「私は四十年前にモラロジーに出会い、世界の安心と平和の実現は道徳によって実
現できると確信しました」。病院経営をされている森理事長は社会からの信頼が厚く、
すばらしいお人を得た協会の幸運を喜びました。
 
 次いで、私が祝辞を述べさせていただきました。まず何より、協会の発展と日伯両
国の友好に献身された先輩方に感謝と敬意を申し上げました。そして、「道徳教育
の退廃と国民の道徳心の衰退とは、すなわち国家の滅亡を意味する」と喝破した廣
池千九郎(モラロジーの創建者)の卓識を紹介して、「道徳的な国家をつくるには、ま
ず個人、家庭からです。道徳の実行は、人間関係において信頼性を高め、仕事を
成功させます。家庭は安定し、万世不朽の家をつくることができます。ゆるぎない家
庭が増えることで、国家は安定し、民主主義も十全に機能します」と申し上げました。

 ブラジルでは多くの思い出ができましたが、特筆したいことの一つは、イタペチセン
ターに設置されている廣池千九郎の銅像の作者に再会できたことです。アントニウス
・ヴァンデヴィールさんが千九郎の等身大の銅像をつくってくださったのは、五年前
の協会三十五周年記念のときです。当時すでに九十歳を超えておられましたが、今
も矍鑠(かくしゃく)とされていて、驚嘆しました。同時に、外国の彫刻家がモラロジー
の創建者の像をつくってくださったということは、モラロジーが日本からブラジルヘ、
そして世界へと広がっていることを象徴しているのではないかと思いました。

 もう一つは、昨年暮れに落成したパラナ州開拓神社に参拝できたことです。
この神社は、現在八十六歳の沼田信一協会相談役が中心となって建てられたもので、
勇気と情熱をもって新天地を開拓した移民の先駆者を記憶にとどめ、その功績を後
世に伝えたいとの悲願が込められています。
北海道出身の沼田さんは、札幌の北海道開拓神社をモデルにされたそうですが、
その精神は先人先輩を尊重する日本の良き伝統的な精神であり、恩人への感謝と
報恩を重んずるモラロジーの精神でもあります。

 今回のブラジル訪間は、うれしい出会いに満ち、未来への希望と勇気を与えてくれ
る、すばらしいものでした。


本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(11月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。

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