| 昨年は、日本列島が多くの自然災害に見舞われた厳し い年でした。 十一月上旬に台風二十三号の被災地、中旬に新潟県中越地震の 被災地を見舞わせていただきました。行く先々で被害の大きさに驚 き、自然の猛威の前に人間がいかに無力であるかを痛感させられま した。依然として多くの方々がつらい生活を強いられていて、胸が痛 みました。一方、皆さんが力を合わせて立ち上がろうとされている姿に心を打たれました。 台風で増水した川の水につかり、動けなくなった観光バスのようす がテレビで映されましたが、舞鶴市のその現場へ行って、地元の方 から直接お話をお聞きしました。 年配の男女三十七人を乗せたバスは、十月二十日夜、一泊二日 の温泉旅行の帰路でこの災禍に遭ったそうです。 由良川からあふれ出た水で国道一七五号は泥の海と化し、バスは 立ち往生しました。車内に水がどんどん入ってきて、座席の上まで、 やがて肩のところまできました。 どなたかが持っていたハサミでバスのカーテンを切り、ロープを作っ て全員バスの屋根に上がったものの、ヘッドライトも消え、真っ暗闇 です。屋根の上では、中央部に身を寄せ合って集まり、流されない ようにロープで結び合いました。水はひざ上、ときに腰のあたりまで きたそうですが、歌を歌い、励まし合って、寒さと恐怖の一夜をがん ばりぬきました。そして明け方、ヘリコプターで救助されたのです。 幸い、乗客が多く、人の重みでバスが流されなかったとのことですが、 一歩間違えれば多くの犠牲者が出るところでした。 地震の被災地、長岡では、車に乗っていた母子三人が被害に遭 った土砂崩れの現場を対岸から目にして、災害の規模の大きさにあ らためて圧倒されました。 三歳にもならない小さな坊やが瓦礫〔ガレキ〕の中で二昼夜耐えぬき、 多くの人々の協力で無事生還したニュースは、日本中を感動させま した。 中国の孟子の言葉に、 「天の時は地の利に如かず。地の利は人の和に如かず」 (『孟子』公孫丑〔コウソンチュウ〕章句下)とあります。 物事を成就させる三つの条件のうち、いちばん大事なものは人の和 である、というのです。台風と震災の被災地を訪ねて、人の和さえし っかりしていれば、必ずや復興することができると強く思いました。 新年を迎えて、この一年の無事と平穏を祈らずにはいられません。 同時に、どのようなことがあっても、人の和を大切にし、天命に従って 人事の限りを尽くしていきたいと思っています。 本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(1月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。 |
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