『国際シンポジューム
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
昨年、パリのユネスコ(国連教育科学文化機関)本部へ行き、
11月7日から9日までの三日間、ユネスコ、国際日本文化研究
センター、そしてモラロジー研究所の道徳科学研究センター
が共催して行った国際シンポジウムに参加しました。
「文化の多様性と通底の価値」をテーマにしたこのシンポジウム
は、ユネスコ創立六十周年の記念事業として位置付けられ、
松浦晃一郎ユネスコ事務局長が開会挨拶をされました。世界の
一流の研究者二十七名が各文化の底に流れる共通の価値に
ついて発表、人類共生のための指針を探る様は知的興奮に満
ちていました。
道徳科学研究センターからは、初日に服部英二研究主幹(ユ
ネスコ事務局長官房特別参与)が「文明間の対話としてのシルク
ロード」と題して基調報告をし、シルクロードに存在した互敬の
精神を今こそ取り戻すべきと説きました。服部主幹が座長を務
める9日の総括セッションでは、岩佐信道研究センター長が「通
底の価値としての相互依存のネットワーク」と題して発表、ユネ
スコの権威ある国際会議でモラロジーとその創建者・廣池千九郎
が初めて紹介されるという歴史的な出来事となりました。
私は二日目に発言する機会を得て、大要、次のような話をしま
した。
「ユネスコの前身は国際連盟が設立した知的協力委員会です。
その委員会の幹事を務められたのが、当時、国際連盟事務次
長として活躍されていた新渡戸稲造博士です。
新渡戸博士は、国際親善、日米友好に渾身の努力を傾けられ
ましたが、西洋思想に行き詰まりを感じておられました。そんな
ときに廣池千九郎と出会われ、廣池が創建したモラロジーは人
類に平和を招来する学問であると高く評価されました。新渡戸
博士は廣池の主著『道徳科学の論文』に心のこもった長文の序
を寄せられています。そうした縁のあるユネスコでこのような機会
を与えられたことをうれしく思います」
そして最後に、
「次回のシンポジウムはぜひ日本で開催していただき、私ども
モラロジー研究所も会場の一つとさせていただきたいと思います」
と申しますと、会場から賛同の拍手がありました。
教育、科学、文化の府であるユネスコ本部で国際シンポジウム
を共催できたということは、モラロジーが学問として認められてい
る証と言えます。シンポジウムの初日には松浦事務局長に昼食
会に、二日目には佐藤禎一ユネスコ日本政府代表部大使に大
使公邸での夕食会にお招きいただき、温かい励ましと期待のお
言葉をいただきました。異文化間の対話はスタートしたばかりで
す。学術団体としてのモラロジー研究所に何ができるか、真剣に
考えていきたいと思いました。参加された皆様との再会を楽しみ
に、晩秋のパリに別れを告げました。

本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』2006(2月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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