『お木曳(きひき)行事に参加して』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
  この五月、平成二十五年に遷御の儀を迎える第六十二回神宮式年遷宮のお木曳行事に、老若男女のモラロジー会員千三百余名の皆さんと「一日神領民」として参加しました。
 神宮式年遷宮は、天武天皇のご発意により、持統天皇四年(六九〇年)に内宮(皇大神宮)で最初に遷宮が行われてから千三百年余継承されてきたお祭りです。内宮、外宮(豊受大神宮)の神殿を二十年ごとに創立当時の姿を変えることなく造り直し、御装束・御神宝も古式のままに調進して御神体をお遷しする式年遷宮には、日本という国が常に若さを保ち、未来永劫にわたって発展するようにとの古人の祈りがこめられています。お木曳は、式年遷宮に必要な檜の御用材を神宮に運ぶ盛大な行事で、五百年以上の歴史があります。
 お木曳前日の五月六日、三重県営サンアリーナのサブアリーナで、モラロジー研究所奉曳団の結団式を行いました。
全国からの皆さんが白い法被姿で集い、そこで私は、「世界最古、最大規模の宗教行事と言われる神宮式年遷宮にお木曳という行為で直接参加させていただけることは、日本人としてこれほどありがたいことはありません」と申しました。皆さんも同じ気持ちだったと思います。その後、夫婦岩で有名な二見興玉神社でお祓いを受け(浜参宮)、心身を清めて翌日の奉曳に備えました。
 お木曳当日の七日朝は、前夜から降り出した雨がやまず、ずぶ濡れを覚悟して、伊勢市宮町の今社神社前の出発地に足を運びました。御用材を積んだお木曳車には透明なビニールシートがかけられ、集合した皆さんも法被の上から合羽をまとっていました。ところが、お木曳車から二百メートルの引き綱が二本伸ばされ、皆さんが綱を手に位置につくころには、雨は小降りになり、気にならなくなりました。
 森下隆生伊勢市長に歓迎の挨拶をいただくと、若い木遣り子たちの先導で出発。「エンヤ!」「エンヤ!」の掛け声とともに、お木曳車はほら貝を吹くような音(碗鳴り)をさせてゆっくりと動き出しました。到着地は外宮北御門。その約一キロの道を、皆さんとエンヤの声を張り上げ、心を一つにして練り歩きました。途中、何度か動きをとめ、木遣り子たちが木遣り唄を歌い、私たちは合いの手を入れました。綱を手に、声を張り上げて歩くうちに、太古の時代の人々と同じ気持ちになっているような、不思議な思いがしてきました。一時間後、外宮に到着。皆さんと万歳を三唱したときには、長い歴史のあるこの国に生まれた喜びが胸いっぱいに広がりました。
 その後、皆さんと御垣内参拝をして、神宮と皇室の弥栄を祈念しました。モラロジー団体としてお木曳行事に参加したのは、今回が初めてです。日本人として、世界に類例のないこの伝統行事を、後世にしっかり伝えていかなければ、と思いました。
本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』2006(7月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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