| 『道徳は家庭から』--本誌創刊五十年に思う-- 明けまして、おめでとうございます。読者の 皆様のいっそうのご健勝とご多幸をお祈り申し 上げます。
昭和三十三年六月に創刊した本誌『れいろう』 は、今年で五十年目を迎えます。特に今月号は 通巻600号という節目となりました。半世紀の歳 月を重ねてこられましたのも、読者の皆様のご
支援の賜物であり、心から御礼を申し上げます。 本誌はこれまで、家庭向けの心の生涯学習誌 として、時代の変化を踏まえつつ発行してきま した。同時に、本誌が五十年間変わらずに唱え
続けてきたのは、「道徳は家庭から」というこ とです。 私の祖父・廣池千英(モラロジー研究所二代所長) は、本誌の創刊号に「楽しい家庭に贈る」と題
して文章を寄せ、その中で、「明るい希望にもえ る日本を造るためには、まず個人・家庭そして 社会を明るく楽しくいたさねばなりません。私 が常に『道徳は家庭から』とさけんでいるのは、
この点にあります」と述べています。 ここに「道徳は家庭から」とあるのは、自分 の家庭だけが明るく楽しければよいということ ではありません。中国の古典『大学』に「修身斉
家治国平天下」という言葉がありますが、私た ち一人ひとりが家庭や国家という集団の一員で あることを自覚し、本誌名をその言葉からとっ た「八面玲瓏」(どの方面から見ても、美しく透き
通っていること。心中に少しのくもりもなく、わだか まりのないさま)の心となって眼前の義務を果た していく、そしてそこから明るい日本、平和な 世界の実現に貢献していこうとする考え方です。
本誌を創刊した昭和三十三年は、敗戦から十 三年、サンフランシスコ講和条約が発効し、日 本の主権が回復してからわずか六年後です。日 本が貧しさから抜け出し、豊かな未来に向かっ
て歩みだそうとする時代に、本誌は、「明るい 希望にもえる日本を造る」という大きな目的に 向かって、まず個人と家庭を明るく、楽しいも のにしようと提案したのです。
しかしながら今、「明るい希望にもえる日本」 となっているでしょうか。昨今の青少年による いじめ、家族間の殺人事件などを見るかぎり、 「暗くて希望のない日本」になっているように
思えてなりません。それは戦後、民主主義の名 のもとに悪しき平等主義がはびこり、家庭では 子が親・祖先を敬わず、学校では生徒が先生を 尊敬せず、地域社会ではお年寄りを尊重せず、
さらに一部の国民は百二十五代にわたって連綿 と続いている皇室の伝統を否定するなど、世代 間の縦のつながりや民族の歴史が断絶されてき た結果ではないでしょうか。
さらに最近の家庭では、母性のみならず、父 性が著しく欠如してきているように思います。 父性・母性とその相補関係がない家庭では、秩 序感覚と温かな心をもった子どもは育たないの
ではないでしょうか。男女は同等ですが、同質 ではなく、それは最近の脳科学で証明されつつ あります。長い進化の過程で、男女の脳は補完 し合うように発達してきたのです。家庭におい
ても、父性と母性を尊重し、それぞれ十分に発 揮しつつ相補っていく中で、子どもは健全に成 長していくのです。 私たち人間は、家庭で生まれ、家庭で育ち、
家庭を基盤として社会で働き、家庭の中で死ん でいきます。家庭は、私たちの生命をつなぐ源 泉であり、人間生活にとって最も基本的な集団 です。安定した国家なくして社会の平和がない
のと同様、安定した家庭なくして個人の安心も 幸福もありえません。人生の幸・不幸は、その 大部分が家庭と国家が安定しているかどうかに かかっているのです。
本誌創刊五十年目にあたり、あらためて「道 徳は家庭から」を再確認するとともに、創刊百 年の時代には、日本が明るい希望に満ちた国に なっていることを念じて、読者の皆様と共に元
気に前進してまいりたいと思います。
本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2007年1月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。 |