| 昨今は、家庭という場で、目を覆いたくなるような事件が相次いで起きています。そのせいか、町で見かける子どもたちの表情まで暗くなったような気がします。親子の愛情や家庭の絆は、一体どうなってしまったのでしょうか。 モラロジーを創建した廣池千九郎は、「そもそも人間の生存・発達及び幸福の第一根本原理は人間の生殖本能・飲食本能及び群居本能に基づきて、家族を構成せしめる点にある」と指摘し、「家族団体は人間社会の基礎を成しておるので、将来、人類にたといいかなる場合あるも、この団体の破壊することはない」と述べています。 また、「この家族団の発展して究極に達せるものがいわゆる国家である」「この家族団体と国家団体とは真に人類の生存・発達及び幸福希求の自然の結果として、人類の精神的及び形体的全部の結合より形成されたるものである」と述べています(以上、新版『道徳科学の論文』七冊目、302ページ)。 どんなに時代が変わろうとも、家族と国家は存在し、その重要性は変わることはないということです。家庭と国家は人間生活の基盤であって、この二つの基盤の安定なくして個人の安心・幸福はなく、自由・平等を標榜する民主主義も保証されません。 その大切な基盤の一つである家庭が揺れ、悲惨な事件が頻発するようになったのは、戦後、道徳教育を軽んじるとともに、家庭や国家は個人と対立する概念として教育され、個人や自由というものがことさら偏重された教育がなされてきたからではないでしょうか。その結果、個人の自由や権利ばかりが主張される世の中になり、家庭や国家を否定する風潮が生まれました。道徳教育を受けない若者が自由や権利ばかりを主張すれば、それが家庭であれば、愛情と信頼という絆で結ばれているはずの親子が対立し、時に悲惨な事件が起こることにもなるのではないでしょうか。 社会においても、得手勝手な動機で人を傷つけたり殺したりする犯罪が増えています。これも道徳とは無縁の、誠の心や人を思いやる心のない人間のすることではないかと思います。 私は、日本の将来を担う子どもたちに、道徳の必要性と、家庭と国家の大切さを教えたいと思います。さらに、父母・祖先、先人・先輩の有形・無形の苦労・努力の上に今日の家庭があり、国家があり、その基盤の上に各自の生命と生活と未来があるのだという、この当たり前の事実をしっかりと心に刻んでほしいとと思います。 昨年の世相を表す漢字は「偽」でした。一日も早く愛情と信頼に満ちた真の家庭を取り戻し、日本を本物の一流国にして、子どもたちに、「この家に生まれてよかった。この国に生まれてよかった。お父さん、お母さん、ご先祖様、ありがとう」 という感謝の気持ちを持ってもらいたいと思います。 本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2008年2月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。 |