『 魂のふるさと
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
  新年明けましておめでとうございます。
 読者の皆様のますますのご健勝とご多幸を心からお祈り申し上げます。
 昨年十一月、恒例の伊勢の神宮参拝をしました。外宮(豊受大神宮)では、五穀豊穣と総合農政の確立、食生活の安全を祈念し、内宮(皇大神宮)では、世界平和と日本国の繁栄ならびにご皇室の弥栄を祈念しました。
 神宮では、平成二十五年の第六十二回式年遷宮に向けて、着々と準備が進められています。内宮への入り口、五十鈴川にかかる宇治橋も、架け替え作業が進められ、今年十一月には渡始式が行われます。
 宇治橋を渡り、内宮に向かう道々、二人の碩学のことが脳裏に浮かびました。一人は、イギリスの歴史家アーノルド・トインビー博士です。博士は三度来日し、二度ほど神宮を訪れています。二度目の昭和四十二年十一月二十四日は夫妻で参宮し、神楽殿で記帳簿に署名して、かの有名な言葉を記します。
 「Hear,in this holy place,I feel the underlyingunity of all religions」-----「この聖地において、私はあらゆる宗教の根底をなす統一的なものを感ずる」
神宮には絢燗豪華な大聖堂などはなく、あるのは千年前と変わらない質素な停まいの御正殿と緑豊かな自然。そこに、一宗教、一宗派を超えた普遍的なものを感じたのでしょう。
 今一人は、アメリカのイリノイ大学名誉教授、元国際比較文明学会会長、モラロジー研究所道徳科学研究センター顧間のマイケル・パレンシア・ロス博士です。昨秋、私どもに滞在され、神宮に正式参拝されるとお聞きしましたので、比較文明論の先駆者であるトインビー博士の言葉を話題にして、「現代にふさわしい、記念碑的な言葉をぜひ残してください」とお願いしました。
 伊勢かち帰られた博士に、「何かお言葉がありますか」とお聞きしますと、ひと言、「Silence(沈黙)」。感動のあまり言葉がない、ということなのでしょう。「宇治橋を渡ったあたりで、"ただいま"という日本語が自然に出ました」とも言われました。神宮は日本人の魂のふるさとであると思っていましたが、外国の方にも同じような感じを持たせる何かがあるのでしょう。
 二人の碩学の言葉に、歴史と伝統のある、自然豊かな国に生まれた喜びをかみしめました。この日本と世界に、真の平和と繁栄が実現するよう願ってやみません。
本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2009年1月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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