『一つのアメリカ
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
  オバマ大統領の登場を、アメリカはもちろん、日本を含めて世界中が歓迎しています。彼は変革と団結を訴えていますが、黒人の彼が世界最大最強の民主主義国家のリーダーになったこと自体、建国以来最大の変革です。
 彼は、黒人のアメリカ、白人のアメリカなどというものはなく、黒人も白人も黄色人種も、キリスト教徒もイスラム教徒も、ユダヤ教徒もヒンドゥー教徒も、無宗教者も、全部含めて「一つのアメリカ」であると言っています。従来は白人中心、軍事力中心で、アメリカによいことは白人によいことであり、陰で多くの人が犠牲になっていた事実がありますが、それは明らかにチェンジしつつあります。
 アメリカは今、百年に一度の経済不況、イラク問題等々、多くの難問を抱えて苦しんでいます。真に団結して立ち向かっていくことを期待しています。
 オバマ大統領は、就任演説の中で、「我々の成功は、誠実や勤勉、勇気、公正、寛容、好奇心、忠誠心、愛国心といった価値観にかかっている。これらは、昔から変わらぬ真実である」と述べています。時代の状況に合わせてやり方はチェンジしていくが、変革の原動力は伝統的な価値観にこそある、と言ってい
るのです。歴史と伝統を尊重する心は、歴代大統領と同じです。
 歴史には、南北戦争や人種差別のような苦い経験がありますが、先人たちは自由や平等のために血を流して戦い、今日の民主主義国家を築いてきました。建国の父ジョージ・ワシントンをはじめ、国の歴代リーダーや先人たちに対する彼の敬意は一貫しています。就任演説でも、まさにその最中に、彼方の砂漠や遠くの山々をパトロールしている勇敢なアメリカ人に感謝を送っています。これは、自由や平等を脅かすものがあれば断固として戦うという意志の表明のように思えました。この国を貫く基本姿勢は、まったく変わっていないのです。
 さらに彼は、「新しい責任の時代」に入ることが求められていると述べ、すべてのアメリカ人が、自分自身、自国、そして世界に対して負う義務を喜んで引き受けていこうと言っています。「オバマのアメリカ」には、歴史と伝統を踏まえ、団結して、困難な任務に全力を捧げようという覚悟が感じられます。同盟国にも応分の責任を求めるでしょう。この国と付き合っていく日本のリーダーと国民に、彼らの覚悟の半分でもあるでしょうか。

本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2009年4月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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