『日本人の元気』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 昨今の日本の元気のなさはどうでしょう。リーダー層はもとより、国民全体が自信をなくし、若い世代に夢と希望を与えたいと思っても、容易ではありません。せめて東京オリンピックを再び開催して、半世紀前の活気を取り戻したいと思うのは私一人ではないでしょう。しかし、国民の意識はバラバラで、招致活動においても盛り上がりが見られません。
 アメリカやアフリカなどは、たいへん深刻な問題を抱えています。わが国も同様の大問題を抱え、元気を失わざるを得ないのかというと、そんなことはないでしょう。しかし、最近の日本人は、本来のよき国民性を忘れ、マイナス発想に陥りやすくなっているのではないでしょうか。
 皇室の祖先神である天照大神と弟神スサノオノミコトの神話は有名です。スサノオは乱暴者で、天照大神が侍女たちと一緒に機織りをしているところに馬の皮を剥いで投げ込みます。ここから神話は興味深い展開をしていきますが、私が注
目するのは、天照大神がみずから機織りをされていたということです。
 普通の国においては、際立って階級の高い人は絶対に手を動かして働かなかったという指摘があります。どこかの国の王様は、火事で城が燃えて炎が迫ってきても、椅子を除ける役の者が椅子を除けなかったので焼け死んだというバカな話もあるそうです。
 ところが、日本では、いちばん重要な神様が機織りという手仕事をして働いておられたのです。その伝統はずっと続いて、二十一世紀の今も天皇陛下は皇居内の水田で苗を御手植えになり、稲刈りをなさいます。皇后陛下も養蚕をなさっています。皇室は祖先神を範とし、国民は皇室を範としてきましたから、勤勉、正直、質素、倹約などの日本人のよき国民性がおのずと醸成されてきたのです。
 日本人に元気がないのは、豊かさになれ、勤勉や勤労の精神を忘れたからだと思います。今こそ日本人の原点に立ち戻って、心を立て直すことが必要ではないでしょうか。
 なお、スサノオが暴れたとき、天照大神は天の岩戸にお隠れになり、世界は闇になりました。八百万の神々は御神楽を奉じ、天照大神はそれを機に姿を現され、世に光が戻りました。今、男女共同参画社会が叫ばれていますが、わが国は女性が輝かなければ社会が闇になることを昔から承知していました。その意味で、日本は、男女共同参画社会より先を行っているのではないかと思う昨今です。
(渡部昇一著『なでしこ日本史-女性は太陽であり続けてきた!』育鵬社刊、参照)

本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2009年8月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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