『奇跡のタイムカプセル』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 明けまして、おめでとうございます。新しい年の幕開けに際し、読者の皆さまのいっそうのご多幸とご健勝をお祈り申し上げます。
 昨年は、天皇陛下御即位二十年、両陛下御結婚五十年という二重のご慶事を迎え、各地で記念行事が企画されました。十一月十二日に参列した皇居前広場での国民祭典は、寒風吹きすさぶ中、全国から三万人が集う盛大な会でした。
 両陛下が二重橋にお出ましになると、歓声とともに日の丸の小旗が振られ、会場が心ひとつに、皇室を戴く国民としての喜びに包まれました。
残念なのは、これだけ盛大な祝賀行事にもかかわらず、NHKなど報道各社が全国中継をせず、その感激が多くに伝わらなかったことです。
 当日の政府主催の記念式典で、天皇陛下は、異例に長いお言葉を国民にお伝えになりました。
「今日、わが国はさまざまな課題に直面しています。このような中で、人々が互いに絆を大切にし、叡智を結集し、相携えて努力することにより、忍耐強く困難を克服していけるよう切に願っています」。国民生活をつぶさに案じておられる慈父のようなお心が感じられ、感銘を受けました。厳しい時代こそ、国民が心を一つにして困難に向かわねばなりません。皇室はその国民統合の象徴として、長い歴史の中で一貫して尊い役割を果たされてきました。
 同じく昨秋、東京・上野の国立博物館で催された「皇室の名宝」展には、狩野永徳、伊藤若沖、葛飾北斎、横山大観という日本美術史上の錚々たる作品が一堂に会していました。皇室は日本の文化資産を守り伝える役割も担われてきました。世界の歴史では、戦争や革命の度に貴重な美術工芸品が散逸してしまった例が多々ある中で、日本の皇室は明治維新にも、また昭和の敗戦にも国民統合の中心として存続し、伝統文化断絶の危機から日本を護りました。
 今年は平城遷都千三百年。地元奈良では記念事業として、かつて天皇が政を司った大極殿が復元され公開されます。千数百年前から万世一系に続いてきた皇室あればこそ、日本は奇跡のタイムカプセルの宝庫といってよいでしょう。
 今上陛下が御即位されて二十年。政治も経済も混迷する中、私たち国民の統合の象徴である皇室の存在意義とその役割を、あらためて考える秋ではないでしょうか。そこから新たな時代を切り拓く、智恵と勇気が湧いてくるはずです。
「あをによし奈良の都は咲く花のにおふがごとく今盛りなり」(万葉集)。この春には、厳しい冬を乗り越えた桜の木々が見事な花を咲かせてくれることでしょう。
本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2010年1月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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