『独身男性へ』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 靖国神社からほど近く、目白通りから一本入った街中に、東京のお伊勢さんこと、東京大神宮があります。古札納めに毎年訪れていますが、この数年来、このお宮の光景に明らかな変化を感じます。狭い境内からあふれる若い女性の人波、お参りの列は見るたびに長さを増しています。東京大神宮が神前結婚式の草分けであり、人気女優が式を挙げたこともあって、縁結びスポットとして未婚女性の話題となっているのです。デジタル時代の申し子たちが、お社に列をなす風景を興味深く思うとともに、良縁を求める現代女性の真剣な願いを痛切に感じとりました。
 国勢調査(平成十七年)に基づく報道によると、三十代前半の女性の三割、男性の半数が未婚なのだそうです。これも時代でしょうか。ひと昔前までは、結婚をしてようやく一人前と見なす空気があり、結婚は人生設計に欠かせないものと考えられていました。年ごろの未婚者がいれば、それこそ親や上司、地域が世話焼きをしたものです。現代はプライバシーに配慮してか、よそ様の子弟のことに口出しをしない、しにくい世情となりました。
 神前で一心に手を合わせる女性たちの姿からは「婚活」への真摯な思いを感じざるをえません。はたして世の独身男性たちは、そんな女性たちの熱意に真剣に応えているといえるのでしょうか。
 最近、異性や恋愛に消極的で、人とのかかわりや摩擦を避けたがる「草食系男子」と呼ばれる男性が増えているといわれます。結婚は、まさに困難や摩擦の連続でしょう。
他人とのかかわりを避けるナイーブな男性が増えれば、結婚はますます敬遠されます。そうした男性が生まれた背景に、家族や父性、男らしさという伝統を否定する"戦後教育"の影響を感じずにおれません。
 人の元気の源は家庭です。帰るべき巣あればこそ、人は己の本分に全力を尽くせます。人間の巣である家庭は、男女の共同作業でつくられ、男性にはその巣を危険や外敵から守る役割があります。巣が維持できなければ、その種は滅んでいくでしょう。困難を乗り越え、家庭を築くことは若い世代の責任です。
 華やかな東京大神宮で、参拝する女性たちの姿に、みな良縁と幸せな家庭に恵まれんことを願わずにいられませんでした。どうかその期待に応えてほしいと思います。
本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2010年3月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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