『戦後日本の鏡』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
   年明けを賑わせたバンクーバーオリンピックが閉幕してはや二か月。連日の話題を独占した熱狂ぶりも、いまや遠い過去のようです。
 閉塞感が社会全体を覆うなかで、ひたむきに健闘した選手の姿には勇気を得ました。選手一人ひとりの努力はおおいに称えられるべきです。
しかしマスコミの熱狂ぶりに比べて、獲得したメダルが銀三個、銅二個という結果は、あまりにも寂しいと思います。
 日本は世界トップクラスの経済力と人口規模を持ち、物質的な環境条件はどこよりも恵まれていながら、なぜいま一つメダルに届かないのでしょうか。勝負に運不運はつきものですが、今回の成績不振を見るにつけ、その原因に思いを致さざるを得ません。
 その原因を思わせる象徴的な出来事が、スノーボード男子代表・國母和宏選手の服装間題でした。記者会見における受け応えの態度にも厳しい批判が湧き起こりました。
オリンピックは単なるスポーツの場でなく、国家の名誉をかけて闘う場です。そこで日本の品位を損なうような言動があったことは残念でなりません。
本人の無自覚ぶりは批難されるべきでしょう。もっとも、私には彼ひとりの問題ではないように思えるのです。
 さらに思い出されるのは、二月に突然引退をした元横綱の朝青龍です。期待が大きかっただけに裏切られた思いのファンも多いでしょう。私も残念に思います。朝青龍の言動は横綱の品位を大きく損ないました。その責任は厳しく間われて当然です。しかし、ふと振り返ると、本当にこの二人の若者を批判できるだろうかとの思いが出てきます。
 戦後の日本では自由、平等、個人の権利を第一に、伝統、権威、義務そして国家を否定する教育が行われてきました。二人の言動は、まさにこうした教育の結果であり、むしろ彼らは、それらを映し出してくれた戦後日本の"鏡"といってよいでしょう。「日本の常識は世界の非常識」と言われて久しくなります。日本の再生には心の再生が急務です。今こそ教育を正していかなければならないと、思わずにいられません。
本稿は、財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2010年5月号)誌に掲載 されている 廣池幹堂理事長の「巻頭言」で、ご本人の承諾をいただき掲載をしております。
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