『白虎隊とボーイスカウト』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
  先日、英国発祥のボーイスカウトの精神に、幕末の会津・白虎隊の示した武士道精神が大きな影響を与えていることを知り、意外な驚きを覚えました。創始者のペーデン・パウエル卿が二十世紀初頭、遊説に訪れた日本で白虎隊の話を耳にして、「これこそ、ボーイスカウトの精神なり」と感銘し、運動の基本精神に取り入れたというエピソードです。
 英国軍人として活躍したパウエル郷はある時、凱旋した母国の街中に、喫煙をしながら無気力に佇む青少年があふれているのを目にし、ショックを受けます。祖国の将来に対する大いなる不安、そこから野外での集団活動により、実社会を生き抜く、心身健全な青少年を養うボーイスカウト運動を思いついたといわれます。パウエル卿にとって、わが故郷と家族を守るために立ち上がり、十数年の生涯を賭した白虎隊隊士の記録が、どれほど心に響いたかは想像に難くありません。
 日本では、古き封建時代の美談として風化しつつある白虎隊の物語。それがこの現代、世界最大級の青少年活動たるボーイスカウトの精神の柱として、日本を含む百六十以上の国々で普及、実践されている事実を日本人の多くは知りません。
 パウエル卿がボーイスカウトに生かそうとしたのは、主君のために命を捧げた白虎隊の行動自体ではなく、その精神でしょう。白虎隊の精神を支えた会津藩の幼児期教育の第一の柱は「父母の恩」「君の恩」「師の恩」の三恩を尊ぶことだったといわれます。その恩に報いんとする心が、隊士の心身に力を与え、英国人までを感動させる事績を歴史に刻んだのです。
 二月十一日、建国記念の日を迎えるにあたって、今日この豊かな暮らしをもたらしてくれた、先人の思に思いを致そうとする日本人がいま、どれだけいるでしょうか。
 建国記念の日は戦前まで「紀元節」といわれていました。紀元の「紀」には、乱れた糸筋をそろえるという意味があります。ものごとの始めに戻って乱れた糸筋を正すこと。二月十一日は、単なる記念日ではありません。
日本という国を築いた先人の偉業を思い、日本人としての誇りと責任を思い起こす、そんな一日としたいものです。
本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2011年2月号)誌に掲載されているものです。
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