『新入生を迎えて』
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 新入生、新社会人の姿も初々しい桜の季節となりました。建設中の東京スカイツリーは世界一の高さ(※1)に達し、東京下町の新名所として注目を集めています。
 日本は先ごろ、長年世界第二位だったGDPを中国に抜かれました。国際競争力ではタイや韓国を下回るとの調査結果(※2)も出ています。日本の先行きが危ぶまれる一方、そうした緊迫感もどこ吹く風と、個人生活を謳歌する若者の姿も散見されます。
 以前、日本の科学技術予算の仕分けを検討する席で「なぜ二位ではいけないんですか」と言った議員がいました。伸びしろの豊富な新興国と、すでに成熟した日本が無理に競い合う必要はないという声もあります。血のにじむような苦労をしてまで一番をめざさずとも、ほどほどにがんばって今の暮らしが維持できれば、それでよいのかもしれません。しかし現状維持とはすなわち退化であることを歴史は証明しています。
 車いすテニスで世界ランキング一位に輝き続ける国枝慎吾選手は、会うたびに新たな夢を語り、その明るく前向きな姿勢にいつも驚かされています。このほど彼が成し遂げた偉業に私は目を疑いました。科学的トレーニングを乗り越え、車いす生活から十七年ぶりに自らの足で歩くことに成功したのです。不可能を可能にした彼の不屈の精神には、頭の下がる思いがいたします。
 このたび、国枝選手の母校でもある麗澤大学の開学五十周年を記念した新校舎「あすなろ」がオープンしました。あすなろはヒノキとよく似ており「明日はヒノキになろう」と伸びゆくさまから、その名をつけられたといわれます。ヒノキは世界最古の木造建築・法隆寺にも使われた最高の建材であり、数百年もの厳しい風雪に耐えて、立派な大木となります。この校舎でよき師に学び、友と切磋琢磨をし、
国と社会の明日を支える、困難に負けない人材に成長してほしい。新校舎「あすなろ」に向かう若者の姿に、そう願わずにはいられません。
※1:高さ634mは電波塔として世界第1位
※2:IMD(国際経営開発研究所)の国際競争力ランキング2010による

本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2011年4月号)誌に掲載されているものです。
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