なでしこジャパン
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
 この夏、日本を最も沸かせたニュースの一つに、サッカー日本女子代表「なでしこジャパン」によるFIFA女子ワールドカップ・ドイツ大会優勝があります。体格のハンディを乗り越え、チームワークで欧米の強豪を次々と打ち破っての優勝は、見る者に勇気を与えてくれました。その戦いぶりはもちろんのこと、試合場外での彼女たちの振る舞いがまた、海外メディアの注目を集めました。とある試合直後の記者会見で、汚れたユニフォームで椅子を汚したくないからと、用意された席に座らず、立ったまま会見に応じた澤穂希(さわほまれ)選手の姿勢を、海外メディアは驚きをもって称賛しました。 

 そんな「大和撫子」の気品と勁(つよ)さを世界に広めた彼女たちのユニフォーム
には、日本サッカー協会のシンボルである、三本足のカラスの絵柄が描かれています。これははるか昔、神武天皇が遠く宮崎・高千穂の地から、国を治めるべく和歌山・熊野に入られた際、天より遣わされてその行く手を導いた「八咫烏(やたがらす)」に由来していることは、あまり知られていないようです。八咫烏の導きで、熊野の山々を踏み開いた神武天皇は、辿りついた橿原(かしはら)の地に宮殿を建て、即位されました。

 なでしこジャパンの快挙に前後して、天孫降臨の舞台として知られる宮崎県の高千穂の地を訪ねる機会がありました。その高千穂神社の後藤俊彦宮司は、神武天皇が即位にあたって示された「世界がひとつの屋根の下に暮せる家のような国をつくる」という肇国(ちょうこく)の理念とは、「異なる文化や宗教を持つ人々が対立せず、互いに尊敬し合って暮す」という国づくりのビジョンであり、二十一世紀の今に見直すべき、大和民族の心の基軸であると語られています。

 なでしこジャパンの女子選手たちは、まさに世界の舞台で、この日本人が連綿と受け継いできた心の気高さ、優しさを発揮し、大和心のあり方を示してくれました。日本国内に目を向ければ、しかるべきリーダーたちの示すビジョンがまったく見えてこない昨今です。世界を切り開いたなでしこのように、迷える日本の男性リーダーたちにも力強く社会を導いてもらいたい。そう思うのは私だけでしょうか。

本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2011年10月号)誌に掲載されているものです。
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