| 昨秋、ブータンの若きワンチュク国王とジェツン・ペマ王妃ご夫妻が、ご結婚後の初の外遊先として日本を訪問されました。柔らかな笑顔で、被災した福島県内の人々や児童と絆を深められるお二人の姿に、多くの日本人が共感と感動を覚えました。 ブータンは先代の国王が提唱した「国民総幸福量」という尺度をもとに、すべての政策を進めることで知られています。国民生活の質を決めるのはモノやお金の多さより、家族との絆など、精神的な幸福感の大きさであるとの考えは、ブータン国民に広く共有され、「今が幸せである」と答えている人は九割に達するといわれます。
経済的には豊かでも、心の貧しさを象徴するニュースの絶えない日本とは、対照的な国といえるのではないでしょうか。 日本では、未婚男女のおよそ八割が「結婚」は「しなくてよい」、七割近くが「子供」を「もたなくてよい」と考えているとの調査結果を最近知り、たいへん驚きました。経済発展に伴って国民のライフスタイルも多様化していくものですが、結婚や子育てといった人との関わりよりも、一人で自由でいたいという若者が増加したらどうなるでしょうか。若者の将来はもちろん、家庭や社会、国家にとっても不幸なことではないでしょうか。結婚や育児に否定的な若者が多い国は、世界でも日本くらいだと思います。
その日本でも東日本大震災の直後は、女性の結婚に対する意識が高まったといわれます。平和な日常では、家族がいるのが当たり前で、特に若い世代は親の干渉を疎ましく感じることもあるものです。今回、未曾有の危機を体験して、いちばん身近で大切な”家族の存在”に多くの日本人が気付いたのでしょう。
戦後の発展の中で私たちが忘れかけていた”いちばん大切なもの”を、多くの人たちが大震災とブータン国王夫妻の姿に感じたのかもしれません。 道路や建物といった物の復興はもちろん大切ですが、日本人全体の心の復興へとつなげていきたいものです。
若者の結婚観の変化は、若者だけの責任ではありません。個人の自由や権利だけを教えてきた戦後教育と、私たち大人の責任というべきでしょう。
日本人に生まれた喜び、そして温かな家庭をもつ大切さを若者に伝えていく、その責任が私たちにはあります。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2012年2月号)誌に掲載されているものです。 |