日本人と桜
モラロジー研究所理事長
廣池学園理事長
廣池幹堂
  「3・11」から一年、変わらず咲く桜の花が、今年はひときわ美しく感じられます。
 アメリカの首都ワシントンのポトマック河畔は、数千本のソメイヨシノが立ち並ぶ桜の名所として知られています。全米から観光客が訪れるこの河畔の並木を日本が寄贈してから、今年は百年目にあたります。
 百年前、日本がロシアとの戦争に勝利してまもなくのころ。ロシアとの講和条約締結を仲介してくれたアメリカへの感謝、そして両国友好への思いを込め、東京市長の尾崎行雄が、タフト大統領のヘレン夫人の要望を受ける形で、桜の苗木を贈ったのです。それから三十年後、日本はアメリカと戦火を交えることとなります。四年に及ぶ総力戦のすえ、日本は敗れましたが、桜は戦火を生き延び、今も変わらぬ姿を伝えています。
 日本が歴史上初めて味わった占領という国難。その占領が、サンフランシスコ講話条約の発効によって解かれ、日本が敗戦で失われた主権を回復したのが昭和27年4月28日。今からちょうど六十年前です。
 日本軍は圧倒的物量の米英仏蘭に対して勇敢に立ち向かいました。白人支配にあえぐ有色人種のために日本民族は尊い犠牲を払い、アジアやアフリカの多くの国々が植民地支配から独立を勝ち取りました。
 昭和30年、そうした国々二十九か国のリーダーが史上初めて集まった「アジア・アフリカ会議」に招かれた日本代表は、「よく来た」「日本のおかげだ」と手がしびれるほどの握手攻めを受けたといわれます。幾百万の尊い犠牲が、永遠に続くと思われた白人支配の歴史に終止符を打ち、まさに白人社会にとっては想定外、アジアやアフリカの独立を待ち焦がれる人々に、”希望の灯”をともしたのです。
 こうした「歴史の生き証人」であるワシントンの桜、そして靖国神社のソメイヨシノが今年も満開を迎えます。その高潔な咲き姿、散り際の潔さから、サムライの精神を象徴するとされる桜。変わらぬ美しさを見せるその花は、独立六十年を迎えた日本の現状を、どのように見ているでしょうか。
本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2012年4月号)誌に掲載されているものです。
バックナンバーは下記をクリック
11月04 12月04 1月04 2月04 3月04 4月04
5月04 6月04 7月04 8月04 9月04 10月04
11月04 12月04 1月05 2月05 3月05 4月05
5月05 6月05 7月05 8月05 9月05 10月05
11月05 12月05 1月06 2月06 3月06 4月06
5月06 6月06 7月06 8月06 9月06 10月06
11月06 12月06 1月07 2月07 3月07 4月07
5月07 6月07 7月07 8月07 9月07 10月07
11月07 12月07 1月08 2月08 3月08 4月08
5月08 7月08 8月08 9月08 10月08 11月08
12月08 1月09 2月09 3月09 4月09 5月09
6月09 7月09 8月09 9月09 10月09 11月09
12月09 1月10 2月10 3月10 4月10 5月10
6月10 7月10 8月10 9月10 10月10 11月10
12月10 1月11 2月11 3月11 4月11 5月11
6月11 7月11 8月11 9月11 10月11 11月11
12月11 1月12 2月12 3月12