| 「巨人・大鵬・卵焼き」と一世を風靡し、戦後最強と語られた「昭和の大横綱」こと大鵬がこの世を去りました。ほれぼれとする白肌の男前で立ち姿も美しく、圧倒的な強さで連戦連勝を重ね、「天才」の名をほしいままにしました。けれども本人は「天才」と呼ばれるのを嫌い、一に努力、二に努力の人だったといわれます。史上最多32回の優勝の陰には、一日に四股を500回、鉄砲2000回をやり通す、想像を絶する努力がありました。その姿が、ゼロからの戦後復興をめざす日本人に大きな夢を与え、そうした夢が、“世界の奇跡”と称賛された高度経済成長を実現する原動力となったのです。 あのころのような経済発展は望むべくもないですが、日本は再び復興をめざし、長引く不況から立ち直ろうとしています。いつの世も、大きな夢に向かって努力する若者たちが時代をつくります。 今年も多くの若者たちが社会へ巣立っていきますが、そうした大学新卒者のうち約3割が「入社前のイメージと違った」などを理由に、3年以内に仕事を辞める現状があります。大変な「就活」のすえに手にした仕事を、なぜ若者たちは簡単に手放してしまうのでしょうか。ケータイやパソコン相手に、好きな世界に引きこもる若者たちに、グローバル時代を勝ち抜く強さがあるのか、心配になります。 ささやかな体験を申し上げると、私は高校時代の3年間、寮生活を体験しました。当時の麗澤高校の寮は6人一部屋です。3年生の「部屋長」のもと、2年生はいわば中間管理職、1年生は「部屋っ子」という上下関係の中で、授業時間以外は一日中一緒でした。自分の殻に閉じこもろうにも、逃げ場がありません。よい人間関係ができれば毎日が、“楽しい修学旅行”ですが、そうでなければ苦痛の毎日です。時に悩み苦しんだ、さまざまな経験を通して、多くの生涯の友を得ました。机に向かって勉強した記憶はあまりないですが、それ以上の大切な何かを得たように思います。 海外旅行など夢のまた夢だった私の時代と比べれば、今の若者たちははるかに恵まれた環境にあります。にもかかわらず、元気ハツラツしているように見えないのは私だけでしょうか。このグローバルな時代、私たちの世代よりも、さらに大きな夢をもって可能性に挑戦できる若者が、一人でも多く育ってほしいと願わずにはいられません。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2013年3月号)誌に掲載されているものです。
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