| 明治44年、福井県の裕福な家庭に生まれたKさんは、幼いころに父親や兄弟を次々と亡くし、成人するころには、母親とたった二人になっていました。弱い身体を酷使しながら、親子二人で酒造業と小売業を切り盛りする毎日。そこへ昭和14年、転機が訪れます。寺の檀家総代会に参加したところ、一人の総代から「お宅にもいろいろと問題が起こっていますが、モラロジーをお聞きになられては?」と勧められ、母と二人でモラロジーの講演会に足を運んだのです。 「長者三代続かず。創業はたやすいが、それを維持発展させるのは難しい」「徳を累積していくことが大切です」。講師の言葉に、風前の灯となったわが家を思ったKさんは、すぐさま当時3か月半の講座を受講し、家の運命立て替えを誓います。 福井に戻ると商売のやり方も改め、お客様の幸せを願ながら一軒一軒丹念にご用聞きに回り、店は地域で1位、2位を争うまでに発展します。また自宅を会場にしてモラロジーのセミナーを開催し、地域の人心の開発に心を燃やしました。その間に6人の子宝に恵まれ、51歳の時に知人の勧めで開店した、地域密着型のスーパーマーケットは、長男のWさんへと引き継がれ、現在は孫へと引き継がれています。Kさんが心血を注いだ毎年のセミナーも代々に受け継がれ、今では54回を数えるまでになりました。 昭和10年に母一人子一人となった一家は、Kさんの懸命な道徳実行の結果、70人を数えるまでになりました。Kさんが亡くなった後も、三世代同居の大家族で商売に勤しんでいます。 福井県は、日本でも三世代同居の世帯が多い県といわれます。さらに意外なことに夫婦共働きの率が全国1位で、出生率が全国2位、そのうえ子供の学力はトップクラスです。 家族のあり方が多様化するなかでも、福井県では、多世代が一つ屋根の下に暮らす「家族の絆」が、しっかりと受け継がれているようです。 モラロジー研究所では、この4月から「家庭教育部」がスタートしました。社会の最小単位である家庭、家族の再生なくして、日本の再生はありません。「福井モデル」にならって、親から子、子から孫へといのちと伝統を受け継ぐ「累代教育」を日本へ、そして次の世代へと伝えていきたいものです。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2014年6月号)誌に掲載されているものです。 |