| 7月に「海の日」が設けられてからおよそ20年。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」という趣旨から、このような祝日を設けているのは、世界でもわが国だけです。周囲を海に囲まれた島国の日本は、まさに歴史も食文化も海とともにありました。特に“捕鯨”の歴史と文化は、縄文時代にさかのぼるといわれます。 ところがこの3月末、国際司法裁判所は日本が南極海で行う捕鯨は違反であるとして、中止命令を出しました。 捕鯨は日本だけでなく、9世紀から欧米でも盛んに行われてきたものです。ペリー来航の目的は、捕鯨船の燃料や食料の補給のためでした。鯨油をとるだけの欧米とは違い、日本は鯨によって生かされていることへの感謝や供養のために神社を建て、肉も骨も一つも無駄にすることなく大切にしてきました。その独特の文化が果たして、外国の判事に「伝わった」のでしょうか。 「黙して語らず」を美徳とする日本人は、自国の文化を過小評価しがちです。 「クールジャパン」と評される食文化やアニメも、日本が火を付けたというより、むしろ海外で評価され始めて、日本人がその価値に気づかされたともいえます。日本人ならではの以心伝心、察し合いのよき文化は、海外では通用しません。NO(ノー)とはっきり反論しなければ認めたことになるのが国際社会です。 「論語」に「子曰く、与(とも)に言うべくしてこれと言わざれば、人を失う」(『論語』衛霊公第15)とあります。言うべき時に、言うべきことを言わずにいると本当の友を失う、という意味です。 昨今の歴史認識問題をみても、日本がきちんと主張や反論をしないばかりに、根拠のない話が、あたかも歴史的事実であるかのように世界中に宣伝されています。 ことに国際政治や外交において「沈黙は金」ではありません。現代の外交は、 自国の国益を守るため、互いに水面下で火花を散らす「情報戦」「言論戦」の応酬です。 問題は「捕鯨」だけにとどまりません。国際社会にNOと言えない現状が、いかに国益を損なっているのか。政治家や官僚だけでなく、私たち一人ひとりが自覚していくべきではないでしょうか。世界から評価される文化とそれを生み出してきた日本人の名誉を守るためにも、言うべきことを言える日本に変えていきたいものです。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2014年7月号)誌に掲載されているものです。 |