| 昨年1月、惜しまれながら天国へ旅立ったKさん。奥様からいただいたお手紙の中に、亡き父を偲んでお嬢さんが書かれたという文章が同封されていました。 私は、小さいころ、父が嫌いでした。すぐ怒るし頭が痛くなるぐらいブツし、子供のことを考えないし、、、、、。 家にはサンタさんは来ないの?って聞いたら、仏教だから来ない!って言うし。草刈り機を買いに行って、ヤギを買っちゃうし。そのヤギに夏休みの宿題のアサガオを食べられちゃうし― 」 19歳からモラロジーを学び、道徳の実践に励まれたKさんは、曲がったことが大嫌いな「怖いお父さん」でした。 うそと他人の悪口は大嫌い。この一途な生き方から、Kさんは管理職まで出世した会社で、労働運動の板挟みとなり、体を壊して退職。「手に職はなくても、ビン集めなら」と思い立ち、35歳でリサイクル業を始めます。ポケットには360円。奥さんのお腹では4人目が育つ中での“人生再出発”でした。 同業者には、ダンボールに水をかけ、重くしてから売る人もいる中、Kさんは家の中で広げて乾かしてから、手渡すのを常としていました。そんな姿勢が、出入りしていた鉄工所の社長の目にとまります。注文を受けた鉄骨がキャンセルになり、対処に困っていた社長は、Kさんにこう言いました。 「あなたはどこか誠実さがある。例の鉄骨を使って鉄工所を始めないか。仕事も出すし、職人も一人預けるから」 思いもよらない形で、鉄工所の経営者となりました。家族を養い、社員の生活を守るため、Kさんは懸命に働きました。そんな中、授かった4人目のお子さんが、冒頭のお嬢さんでした。初めての女の子でした。かわいくないはずがありません。 お嬢さんの手紙には続きがあります。「でも、今はそんな父が大好きです。 子供のころから苦労して、会社を起こしてからも苦労して、、、、。私たち5人の兄弟を不器用な愛情で包んでくれて、、、。 もっと怒ってほしかったです。もっと笑顔が見たいです。お父さん!お父さんの子供で幸せでした」 厳しくも人なつっこい、あの笑顔にはもう会えません。日本から「頑固親父」がまた一人、いなくなりました。そんな寂しさを感じながら、今年も「父の日」がやってきました。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2015年6月号)誌に掲載されているものです。 |