| 被災地の熊本を訪れました。 天守の瓦も石垣も崩れた熊本城は、想像以上の惨状でした。幸い、城内に鎮座する加藤神社は大きな被害もなく、その日に行われていた結婚式は、地震が起きてから、すでに十組目とのこと。加藤清正公に対する熊本の方々の思いの強さを感じました。 初代藩主となった清正公は、天下の名城・熊本城を築き、治水や灌漑工事に力を入れ、貧しかった肥後の国を豊かな土地へと変えていきました。「後の世のため」は、遺訓の一つです。今というものは、未来につながってこそ、価値のある今となる――。数百年の時を超えて、清正公の心が熊本の“今”に生き続けています。 佐賀県では、日本に現存する最古の孔子廟「多久聖廟」を訪ねました。山の中でおよそ300年、このような聖廟が存在し続けていたこと自体が、驚きでした。そこで待っていてくださったのは、その日、聖廟参拝に訪れていた同胞保育園(佐賀県有田市)の森山隆子園長とかわいい園児たちです。数年来の約束をようやく果たすことができました。 子供たちは石畳のうえに素足で正座をし、列をそろえて、その時を待っています。 「それでは丹田から声を出しましょう」 森山園長の言葉とともに、園児たちの背筋がスッと伸びました。「子曰く、学びてときにこれを習う」「し、いわく!まなびてときにこれを・・・・」森山さんの園には三つの指針があります。論語教育、漢字教育、そして腰骨を立てる立腰教育です。楽しみにしつつ来ましたが、目の前で起こる光景は、驚きと感動以外のなにものでもありませんでした。 森山さんは、寺の住職だったお父さんが始めた保育園を受け継ぎ、幾多の困難を乗り越えながら、幼児教育ひと筋に歩んでおられます。そうした中でモラロジーとのご縁も大切にしておられます。こういう教育者と子供たちがいる限り、日本の未来も九州(熊本)の復興もきっと大丈夫と、確信しました。 明治維新は、地方の人材が原動力となって成し遂げられました。累代教育で次の世代の心を育てる、九州人の底力に確かな未来を実感する訪問となりました。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2016年9月号)誌に掲載されているものです。 |