| 残暑の一日、古都・奈良を訪ねました。 平城京で花開いた天平文化の香りを千三百年の時を超えて伝える、奈良のまち全体が、世界遺産となっています。 この奈良に次ぐ県下の都市・橿原で、モラロジーを学ぶ方々との集いが催されました。まだまだ元気な先輩方、明るく活発な女性クラブ、はつらつとした青年クラブ……。世代を超えて学び合う姿は、私か勝手に抱いていた謙虚で大人しい奈良のイメージをあざやかに覆すほど、子不ルギーに満ち溢れていました。 なかでも印象的だったのは、次の地域や日本を担う二十代、三十代、四十代の青年たちが確かな志をもって、元気に活躍している姿です。古きよき伝統をただ守るだけでなく、若い世代がそれを新しい感覚で受け継ぎ、次につなげていく。"累代教育”の実践を、古都・奈良でも見ることができました。 市内にあるカプセル製剤の先進企業S社では、社長さんのご案内で最新鋭の工場を見学し、お元気な九十五歳の創業会長さんのお話も伺うことができました。 折しも橿原神宮は、初代天皇である神武天皇二千六百年大祭を迎え、両陛下が参拝された四月の式年祭の様子が紹介されていました。京都御所の賢所を移して創建されたお社には、皇室のご祖先を大切にお祭りしようという先人の思いが感じられました。 意外だったことは、参拝する人の姿がほとんどなかったことです。平日の午後とはいえ、明治神宮より広い参道は静寂に包まれ、わずか数人の人影を見るばかりでした。 八月八日、今上陛下はビデオメッセージで、生前退位のお気持ちを表されました。国民の安寧と幸せを祈られ、八十の齢を超えてなお、先の大戦の慰霊や被災地への思いを片時もお忘れにならない陛下。神武天皇が掲げられた「徳によって天下を一つの家のように和合させる」という建国の理想が今も受け継がれていることを感じずにいられません。道義・道徳を大切に二千六百年もの間、永続してきたわが国・日本。その中心にある百二十五代つづ く皇室の存在は、まさに累代教育の極みです。 日本人として累代教育を受け継いだことへの喜び、責任の重さを思わずにいられない、貴重な一日となりました。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2016年11月号)誌に掲載されているものです。 |