| 本年2月28日から3月5日にかけて、天皇皇后両陛下はベトナムを初めて訪問されました。そのとき、ベトナムに残留した元日本兵の家族と面会された場面は、本当に感動的でした。日本兵の夫が一人で帰国を余儀なくされたあと、厳しい環境で女手一つで子育てをされた苦労が、両陛下のねぎらいですべて報われたように見えました。 先の大戦後、600名とも800名ともいわれる日本兵がベトナムにとどまり、ホー・チ・ミン率いるベトナム独立同盟に参加したという事実があります。また現地で士官学校が設立された際、ベトナム側から請われて日本兵が教官となり、幹部の養成に尽力しました。 再び同国の植民地化を目論むフランスとの第一次インドネシア戦争で、最終的にベトナムは独立を勝ち取ります。その陰には、残留日本人の絶大な貢献がありました。フランス軍は、かって支配していたベトナムの軍隊が突如強力になり、衝撃を受けたことでしょう。 陛下は、歓迎晩餐会でのお言葉の中で、ベトナムと日本国との深いつながりについても述べられています。 8世紀に、奈良の大仏の開眼の儀式が開かれた際、現在のベトナム中部にあった林邑(りんゆう)の僧侶・仏哲が舞を奉納しました。このとき奏された林邑の音楽は、雅楽の楽曲として現代に伝わっています。また16〜17世紀頃、日本から多くの交易船がベトナムをを訪れ、日本人町もつくられました。ベトナム中部のホイアン旧市街には、「日本橋」と呼ばれる橋が今も存在します。さらに20世紀初頭には、日本の近代化に学ぼうとする「東遊(ドンズー)運動」が起こり、約200名の青年が日本に留学していました。 今もベトナムの方々は、政治体制の違いに関係なく、日本から学ぼうとされています。特に 関心を持たれているのは、日本人の高い道徳心です。日本の発展の要因は道徳心にあると、彼の国では考えられているのです。 モラロジー研究所も、近年ベトナムとの関係を深めています。ホーチミン市人文社会科学大学の卒業生を研修生として受け入れたり、同大学で発足した道徳研究センターと協力関係を結んだりしているのです。 私はベトナムを訪問した際、ベトナム人の親日度の高さと、寛容な民族性を肌で感じました。今回の両陛下のご訪問や民間の交流が契機となり、日本国のベトナム、アジア地域へのさらなる貢献を期待したいところです。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2017年5月号)誌に掲載されているものです。 |