| 本年3月5日に、大阪で「廣池千九郎生誕150年記念経済・経営シンポジウム」が開かれ、大阪商工会議所副会頭の鳥井信吾氏にご参加いただくなど、盛会のうちに終了いたしました。 鳥井氏は、ご挨拶の中で、同氏の祖父が創業したサントリーでは、「道経一体思想」といえる経営が伝統的に行われてきたことを話されました。また同社が、利益の三分の一を社会貢献に役立てる「利益三分主義」を貫いていることもうかがい、非常に感銘を受けたものです。 昭和6年9月21日に、廣池千九郎がモラロジーに基づく社会教育の第一声を発した場所が、今回の会場となった大阪でした。その際、新渡戸稲造から紹介を受けた千九郎は、満州事変が勃発して3日後の混乱した経済界に対し、道徳的経営の重要性を説きました。「道徳と経済は一体である」「品性を資本とする」といった千九郎の思想は、当時の経済人たちに大きな影響を与え、多くの会社が戦中戦後をたくましく生き抜き、今なお繁栄し続けています。 さらに大正初期にさかのぼると、千九郎は、日本資本主義の父・渋沢栄一を会長とする「帰一協会」で「義務先行説」を説きました。企業活動にあてはめれば、国家が健全に運営されているおかげで事業が行えるのであり、国家に感謝し、恩に報いる義務を先行させることが重要だという意味です。この考え方に、渋沢は「我が意を得たり」と感じたことでしょう。後年著された「論語と算盤」の思想に影響を与えたとも想像されます。 残念なことに、現在の日本では、国家に対する意識が失われ、社会に貢献する義務を果たす気持ちが薄れてきたように思われます。企業の社会的責任が叫ばれている一方、モラルの乏しい戦後教育のもと、企業の不正行為や不祥事が後を絶ちません。大企業ほど影響・責任は大きいのです。自由と権利を主張する前に、義務や責任をしっかり果たすことが必要です。道徳教育を通じて真の「人づくり」を行っていかなければなりません。 かつてこの国には、出光佐三や土光敏夫のような、自社の利益よりも国家の利益を優先する気骨ある経営者がいました。最近の予測不能な世界情勢は、戦争勃発前の昭和初期の状況に似ています。今ほど、社会や国家の利益を見据えた経営者の出現が求められているときはありません。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2017年6月号)誌に掲載されているものです。 |