| 麗澤大学の名誉博士、そして麗澤幼稚園名誉園長をお務めいただいた犬飼道子先生が、本年7月24日に逝去されました。96歳の偉大な生涯でした。 先生とのご縁は今から27年前、ボートピープルのベトナム人青年を麗澤大学で受け入れたことに始まります。身一つで日本にたどり着いた彼の親代わりとしてお世話なさっていたのが、犬飼先生だったのです。 祖父・犬飼毅首相が5・15事件の凶弾に斃れたのは、先生が11歳のときでした。その後、戦時下において洗礼を受け、戦後はいちはやく留学。かっての敵国の人々とふれあう仲で人間愛の精神を深められた先生は、評論家として活躍する一方、世界中の紛争地や難民キャンプを駆け回り、一人ひとりの人間と真摯に向き合われました。言葉だけの平和主義者ではなく、常に身をもって示された「行動の人」でした。ある時、「これから軍用機でボスニアに行きます」との突然の連絡に驚かされたこともあります。小さなお体のどこにあれほどのエネルギーを秘めていらっしゃるのか、不思議でなりませんでした。 難民支援を実地で経験された先生の講義は、多くの若者の魂を揺さぶりました。その指導のもと、紛争さなかにあったクロアチアやボスニア・ヘルツェゴビナ、ユーゴスラビア等で、瓦礫の撤去や救援物資の仕分けなどのボランティアを体験した学生もいます。普通ではあり得ない「真の国際人教育」が学生の人生観にどれほどの影響を与えたかは、計り知れません。世界の現実を目の当たりにし、国家とは何か、平和とは何か、国際貢献とは何かを切実に感じた学生たちは、今、各方面で活躍しています。 卒業式では、こんなはなむけの言葉を贈ってくださいました。「お金を至上としない倫理観を麗澤で学んだ皆さんが、毎日1本のマッチをともし、存在を示してください。それによって日本を”本当の人間の社会”につくり上げてください」 現代の吉田松陰----その熱き魂を受け継ぐ若者たちの活躍を願ってやみません。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2017年11月号)誌に掲載されているものです。 |