| 「夕焼け小焼けの 赤とんぼ 負われて見たのは いつの日か・・・・」「垣根の 垣根の 曲がり角 たき火だ たき火だ 落ち葉たき・・・」 童謡「たき火」の発祥の地が東京・中野であることを知る人は、どのくらいいるでしょうか。今では高層ビルが建ち並ぶ都会にも、かってはそんな風景が広がっていました。 私たちが子供のころには、よくこうした童謡を耳にし、口ずさんだものです。この歌詞にあるような美しくも懐かしい風景を、父母の背中の温かさとともに思い起こす方も多いことでしょう。 童謡は大正7(1918)年に鈴木三重吉らによって創刊された児童文芸雑誌『赤い鳥』とともに発展してきました。その誕生から、今年で100年。この節目に『こころに生きつづける歌―――童謡・叙情歌への想い』(産経新聞出版)という本が出版されました。著者の二宮清さん(モラロジー研究所特任教授)は、企業人として活躍のかたわら、童謡・唱歌のふるさとを訪ね歩き、その歴史的研究にライフワークとして取り組んできた方です。共著者の加藤登紀子さんによる童謡のCDもついており、その美しい歌声に、私自身も忘れかけていた古き良き日本の懐かしい風景を思い起こしました。 大正・昭和は遠くなり、平成からさらに新しい時代へと移り変わろうとしている今、町の風景だけでなく、子供たちの心の風景まで変わってしまったようです。それはバブルの崩壊で始まった平成の30年間に、経済的な豊かさのみを追い求める中で加速してきました。 美しい山や川。雄大な海。田畑が広がり、お社がある、ふるさとの風景。自然の恵みへの感謝。家族のきずな・・・・。童謡は心の風景であり、日本人の豊かな情緒を育んできた「心のふるさと」です。世界を驚かせた戦後の復興の礎でありクール・ジャパンの原点でもある、そんなふるさとの景色が失われていくのは、なんとも寂しいことではないでしょうか。今、先人たちの美しい心を思い起こし、次の時代にも歌い継いでいきたいものです。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2018年11月号)誌に掲載されているものです。 |