平成最後の年の瀬。ノーベル賞受賞のニュースで本庶佑(ほんじょたすく)教授が見せた「日本の怖いオヤジ」の姿に、懐かしい思いをしたのは私一人でしょうか。 平成の30年、多くの日本人が経済・学術・文化・芸術・スポーツ等、さまざまな分野で世界的に活躍してきました。女性の活躍も見逃せません。 昭和34(1959)年の皇太子殿下のご成婚は、小学生だった私の目にもはっきりと焼き付いています。テレビのなかった東京の自宅から学園に来て、大勢の人たちと一緒に拝した美智子妃殿下の光り輝くような笑顔は、忘れることができません。 戦後の復興の象徴となった「ミッチー・ブーム」で爆発的に普及したテレビは、皇室と国民の距離を一挙に縮めました。 民間から皇室に嫁がれ、皇太子妃として大変なご苦労もあったでしょうが、家庭においてはよき母として、3人のお子様を立派に育て上げられた美智子妃殿下。皇后陛下となられてからは、天皇陛下と共に象徴としてのお努めを果たしてこられました。 そのお姿に私たちはどれほど励まされ、勇気を与えられてきたでしょうか。気品に満ちた美しさとあふれんばかりの教養は、国内はもとより世界中の人々を魅了し、まさに戦後の女性活躍の先駆けでした。 もちろん日本の歴史上も、多くの女性たちが活躍してきました。白駒妃登美さんの新著『なでしこ物語』(モラロジー研究所刊)に登場する奈良時代の光明皇后も、その 一人です。千年以上も前に孤児や病人など、困窮する人々を救ったという事績は、近年の自然災害に際して天皇陛下とご一緒に被災地を訪問され、避難所の床に膝をついて人々を励ましてこられた皇后陛下のお姿に通じるものです。 日本女性の美徳を受け継ぎ、激動の時代を歩んでこられた皇后陛下。どうかご譲位後はゆっくりとお二人の時間を過ごされますことを、感謝を込めて願っております。そして私たちは、両陛下が示された「家族のあり方」「よき日本人の生き方」を、次の時代に しっかりと伝えていかなければならないと思います。 新年を迎えるにあたり、19年続けてきた「れいろうの目」も、今回で一段落とさせて頂きます。長い間お読みいただいた読者の皆様に心から感謝申し上げますとともに、新しい時代が皆様にとってよりよきものとなりますことをお祈り申し上げます。 本稿は、公益財団法人モラロジー研究所出版部発刊の『れいろう』(2018年12月号)誌に掲載されているものです。 |